2026年10月22日(木)・23日(金)の2日間、福井県産業会館で開催された「北陸技術交流テクノフェア2026」に、福井大学 先端マテリアル創造ものづくり研究室として出展しました。
会期中、研究室のブースにお立ち寄りいただいた皆様、誠にありがとうございました。
今回の展示では、「放送波から情報と電力を。」をテーマに、無給電ラジオHOOPRA、テキスタイルアンテナTEXRA、電波発電、そして災害時の情報到達性に関する研究成果を紹介しました。
電源を使わずに放送を受信するHOOPRA
無給電ループ型ラジオHOOPRAは、外部電源や電池を使用せず、放送局から届く中波AM放送の電波エネルギーを利用して放送を受信する装置です。
今回も、大型のループアンテナを展示し、身の回りに届いている放送波が、情報だけでなく電力としても利用できることを紹介しました。
私が長年取り組んできた電波発電の研究では、放送波に含まれるわずかなエネルギーを取り出し、LEDを点灯させるなど、電波の新しい利用可能性を探っています。
放送波は、普段は目に見えず、その存在を意識することも少ないものです。しかし、私たちの生活を支える放送・通信インフラの一つであり、災害時には重要な情報伝達手段にもなります。
今回の展示を通じて、放送波が持つ情報とエネルギーの両面に関心を持っていただけたのであれば、大変うれしく思います。
布がアンテナになる! テキスタイルアンテナTEXRA
もう一つの中心的な展示が、研究開発を進めているテキスタイルアンテナ「TEXRA(テキスラ)」です。
今回、AMラジオ用、FMラジオ用、地上デジタルテレビ放送用のタペストリー型アンテナ試作品を展示しました。
従来のアンテナというと、金属製の棒や屋外に設置する大型のアンテナを思い浮かべる方が多いかもしれません。
TEXRAは、布を利用することで、生活空間に自然に溶け込む新しいアンテナの形を目指したものです。
ただし、単に従来のアンテナの材料を布に置き換えただけではありません。
受信性能、安定性、信頼性を重視し、実用化を見据えた研究開発を進めています。
会場では、布がアンテナとして機能することや、地上デジタルテレビ放送にも対応する試作品があることに、驚かれる方もいらっしゃいました。
技術的な詳細は非公開としていますが、多くの方に実物をご覧いただき、新しいテキスタイルアンテナの可能性を感じていただく機会になりました。
県外からの来場者との、楽しく充実した電波・ラジオ談義
今回、特に印象に残っているのは、地元企業のみなさんは勿論ですが、遠路お越しいただいた方々との交流です。
ラジオや電波に関する深い知識と経験をお持ちの方々が、本ブースを目的に遠路ご来場くださり、受信技術や放送波の伝搬、アンテナなどについて、楽しく、そして充実した議論をすることができました。
ラジオという技術は、長い歴史を持っています。
しかし、その電波の伝わり方や周囲の環境との関係には、現在でも興味深い現象が数多くあります。
実際にラジオやアンテナに親しんできた方々ならではの視点や経験を伺うことは、研究を進めるうえでも刺激になります。
今回の展示では、研究成果を説明するだけでなく、来場者の皆様から多くのお話を聞くことができました。
こうした双方向の交流こそ、技術交流展示会の大きな魅力だと改めて感じました。
能登半島地震から考える、災害時の情報到達性
今回の展示では、能登半島地震を契機に取り組んできた、災害時の情報到達性に関する研究についても紹介しました。
災害時には、停電や通信設備の被害によって、普段利用している情報通信手段が使えなくなる可能性があります。
そのような状況で、どのような電波が、どこまで、どのように届くのか。
特に、中波AM放送、短波放送、FM放送、地デジテレビ、携帯電話通信には、それぞれ異なる電波伝搬特性があります。
私の研究では、実際の放送波を測定し、地域の地形や建築物、地下空間などが電波の到達性に与える影響を調べています。
重要なのは、単に電波が存在することではなく、必要な情報が必要な場所まで届き、実際に受信できるかどうかです。
今回の展示を通じて、災害情報到達性の観点で最後の砦となるラジオ放送インフラと防災・国土強靱化との関係についても、多くの方に関心を持っていただくことができました。
地中波と雨降りモデル ~電波は地下や建物の中でどう伝わるのか~
今回の展示では、地下空間や建築物の内部における電波伝搬についても紹介しました。
福井市の足羽山にある笏谷石採掘場跡などで実際の放送波を計測し、FM放送や中波AM放送などの到達性を調べています。
特に、地中空間における中波伝搬現象に着目し、「地中波」という観点から研究を進めています。この研究成果については、現在、学術論文を投稿中です。
また、トンネルや鉄骨構造物などにおける電波伝搬現象を理解するため、「雨降りモデル」という考え方についても検討を進めています。
こうした現象を実測に基づいて明らかにすることは、トンネルや地中施設、避難場所などにおける災害時を含めた情報到達性を考えるうえでも重要です。
今後も、さまざまな環境での独自の計測手法を探求し、電波が実際にどのように伝わり、どこで受信できるのかを明らかにしていきたいと考えています。
企業の皆様との交流と、社会実装への可能性
今回のテクノフェアでは、TEXRAをはじめとする研究成果に関心をお寄せいただいた様々な分野の関係者の皆様とも、貴重な意見交換をすることができました。
展示会での出会いをきっかけに、異なる分野の技術を結び付ける可能性について直接お話しできたことは、大変有意義でした。
私は、研究成果を研究室内の試作品で終わらせるのではなく、今後の連携を通じて、製品化や防災・国土強靱化への社会実装を加速していきます。
今回お会いした企業の皆様とのご縁を大切にしながら、今後の展開を探っていきたいと思います。
「放送波から情報と電力を」プレゼンテーション
初日の10月22日には、会場内のプレゼンテーションコーナーにおいて、
「放送波から情報と電力を ~電波発電と防災・国土強靱化」
と題した研究紹介も行いました。
無給電ラジオHOOPRAによる放送波の受信、電波エネルギーの利用、地下空間や災害時の情報到達性、そしてテキスタイルアンテナTEXRAの可能性まで、一連の研究のつながりを紹介しました。
放送波は、情報を届けるだけでなく、電力として利用する可能性も持っています。
そして、災害時には、その電波がどこまで届くのかということが、人々の安全や安心にも関わります。
こうした研究を、今後も実測と実験に基づいて発展させていきたいと考えています。
ご来場いただいた皆様へ、心より御礼申し上げます
2日間の展示を通じて、研究成果に関心をお寄せいただいた多くの皆様と交流することができました。
県外から遠路お越しいただいた皆様、ラジオや電波について楽しい議論を交わしてくださった皆様、研究成果の応用や製品化に関心をお持ちいただいた企業の皆様、本当にありがとうございました。
また、出展の準備から当日の運営までお世話になりました関係者の皆様にも、心より感謝申し上げます。
今回の展示会は、研究成果を発信するだけでなく、さまざまな方々の経験や知識に触れ、新しい可能性を考える貴重な機会となりました。
これからも、放送波から情報を受信し、電力を取り出す技術、電波の伝搬と情報到達性、そして新しいアンテナ技術の研究を通じて、社会に役立つものづくりに取り組んでまいります。
今後とも、福井大学 先端マテリアル創造ものづくり研究室の研究活動にご関心をお寄せいただけましたら幸いです。
ご来場いただいた皆様、誠にありがとうございました。
福井大学
先端マテリアル創造ものづくり研究室
庄司英一
